「思い出詰まったこいのぼり」倉庫から出せず 地震で川渡し開催断念

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金居達朗
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 能登半島地震で大きな被害を受けた石川県珠洲市大谷町で、約40年にわたって端午の節句の時期に開催されてきたイベント「大谷川鯉(こい)のぼり川渡し」の中止が決まった。全国から寄贈された数百匹のこいのぼりを川の上空に泳がせ、地域住民や観光客にも人気だが、主催する市民団体会員のほとんどが避難生活をおくり、道路状況も改善しないため、苦渋の決断となった。

 地震の被害を免れた倉庫には、今年使う予定だったこいのぼりが衣装ケースに入れられて保管されていた。市民団体「一歩(いっぷ)の会」で事務局長を務める吉原忠男さん(73)は「こいのぼりはほとんどが寄贈されたもの。贈ってくれた人たちの思い出がたくさん詰まっとるんです」と衣装ケースを開けて話した。

 吉原さんによると、イベントは1985年から始まった。以来、新型コロナウイルスが流行した2020年をのぞき、毎年開催されてきた。市内でも一大イベントとなり、ゴールデンウィーク中の帰省客や観光客らに親しまれてきた。「鯉恋(こいこい)結婚式」と名付けて、こいのぼりの下で結婚式を行うこともあったという。

 同会で広報を担う大兼政忠男さん(76)は、同県白山市のホテルに2次避難している。「子どもの歓声を聞くために、少人数でむちゃをして始めたもんですが、市内でも田舎の大谷を認知してもらえてうれしかった」と目を細める。約40年間続いたイベントを「友達のような存在」と振り返る。

 大兼政さんの自宅は倒壊しな…

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